新潟県は長い。
例えば村上市から糸魚川市までの距離と、新潟市から東京都心までの距離はほぼ同じである。この驚愕の事実からも分かる通り、県内であるとはいえ上から下に移動するのも、なかなか大変である。
これを新潟演劇界で考えてみよう。新潟市の人が糸魚川市の演劇状況を知らないのも、津南町の人が新潟市の演劇団体を知らないのも、この長さを考えれば当然なのだ。
実は上越市の演劇が盛り上がっている。この事実を新潟市や他の地域の人が知らないとしても当然なのではないだろうか。
最近、新潟劇王に劇団上越ガテンボーイズが出場した事によって、その片鱗は新潟市でも知られる事になったが、上越市の劇団はガテンボーイズだけではない。
今回は昨年第一回公演を上演した、上越演劇集団ゴーストハートを紹介したいと思い、年末の稽古場までお邪魔させてもらった。
【上越演劇集団ゴーストハート】
演劇活動20年の節目にあらかわ健二が立ち上げた演劇集団。「わかりやすくて面白い演劇作り」をモットーに、常に面白いことを追求し、目の前のお客様を楽しませることだけに全力を注ぐ。

この日、上越市の公共施設で稽古しているとの事で、お邪魔すると、熱心に本読み練習をしている、あらかわ健二さんと内藤ヨシヒトさんの二人がいた。
台本は半分ほど入っているとの事で、本読みとはいえ立ち上がったり身振り手振りが入りかなりの熱演、且つ余計な力も上手く抜けたいい感じの演技。
台本は時々確認する程度で、キャラクター同士の感情のやり取りや、全体の流れを確認しながらの練習に思えた。
物語の全体の流れは初見なので分からないけど、時々くすりと笑える所もあり、これから面白い作品が出来るのではないかという手応えも感じた。
稽古終了後、お二人に取材をさせてもらいました。
二瓶光 まずは自己紹介をお願いします。
あらかわ健二 上越演劇集団ゴーストハートで座長を務めてる、あらかわ健二です。脚本に演出に役者と、幅広くやっております。高校生の時から劇団上越ガテンボーイズ(※)に入団していて、16年いました。途中ガテンボーイズ4代目座長もしていましたが退団し、新たに上越演劇集団ゴーストハートを結成しました。演劇は、21年やってます。

内藤ヨシヒト 同じく上越演劇集団ゴーストハートに所属している内藤ヨシヒトです。主に役者とスタッフをしています。初めは、城北中学校3年生の時に青少年演劇集団スタートライン(※)に参加して、高校1年から劇団上越ガテンボーイズに入団しました。10年間在籍してたのですが3年前に退団しまして、一度は演劇から離れてたけど、再び上越演劇集団ゴーストハートに参加しています。

二 演劇以外で興味がある事は何でしょう?
あ アイドルですかねえ。アイドルは中学生くらいからずっと好きで、入りはモーニング娘。で、そこからAKBに行って坂道グループに行って、最近解散しちゃったんですけどBiSHってグループがいて、今はBiSHのメンバーのそれぞれの活動を追っているって感じです。
内 自分は高校の時からアニメを見ていて、演劇にも関係するんですけど声優さんの演技も意識しています。アニメはガンダムとかポケモンとかコナンとか、今はラブコメのアニメとかを見ています。声優は茅野愛衣さんがずっと好きで『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』が代表作の声優です。
二 メンバーは今何人くらいですか?
あ・内 二人です。
二 ゴーストハートの設立はいつでしょうか?
あ ホントは令和元年の12月9日に立ち上げたんです。私一人で。でもそこから、ちょうど新型コロナウイルスが流行って演劇が出来ない時期が続いて、私は一回STAGE D(※)の方にお世話になってました。昨年の12月に内藤を誘ってゴーストハートをやるってなって、活動を本当に始めたのは今年(※取材は2023年、令和5年)の1月ですね。設立をどっちにするかっていうのは明確じゃないんですけど。ホームページには令和5年って書いてあります。
二 まあ設立が元年で、活動が今年からという事ですかね。
あ まあ、正確に言うとそうです。
二 上越演劇集団ゴーストハートをまだ見てない人に、どんな劇団か紹介するとしたら、どんな風に紹介しますか?
あ よく自分が言ってるのは、分かりやすくて面白い作品作りをメインにやってますと。お客さんに「面白かったね、楽しかったね」って言って帰って頂けたらそれで十分ですね。あと、オリジナル作品をやるっていうのはずっとあります。
内 座長と被っちゃうんですけど、誰が見ても楽しくて面白い雰囲気で終わる演劇集団で、お客さんも大事なんですけど、演者側も一つの物を作る時に、楽しく和気あいあいと取り組んでいる集団ですね。
※補足
【劇団上越ガテンボーイズ】
2000年旗揚げ。何度かの座長交代を経て、現在は初代座長のマル丸山氏が再び座長を務める。HP
【青少年演劇集団スタートライン】
上越市立城北中学校の生徒たちによる演劇集団。新型コロナウイルスの影響下で、2020年10月の25thの公演を最後に活動休止。参考記事① 参考記事② 参考記事③
【STAGE D】
上越を拠点に活動する劇団。保坂正人氏が代表を務める。2016年結成。HP
二 二人ともガテンボーイズにいた訳ですが、その時と方向性は違いますよね?
あ 自分がガテンボーイズ座長の時とは、方向性はあまり変わってないですね。
二 では、あらかわさんがガテンボーイズの座長になった時って、それまでと変わりました?
あ 今、STAGE Dでやってる保坂さん(保坂正人、あらかわさんの前のガテンボーイズ座長)が座長の当時は、けっこうガンガン上を目指そう、入場料でメシを食えるようになろうって感じだったんですけど、そこはちょっと俺と合わなかった部分ではあります。その時は保坂さんに合わせて役者に専念してたんですけど、保坂さんが辞めて自分の劇団を立ち上げるってなって、そこからはそういう事は一回やめて、自分達のやりたい事を楽しくやろうという考えが中心になりましたかね。
二 保坂さん時代のガテンボーイズの公演も観てますが、あらかわさんの時とは作風が違いますよね。
あ まあそうですね。
二 個人的には笑いの比重が高くなって来てると思うんですが。
あ ここ数年で自分の中の意識って大分変わったんですよ。俺もちょっと前までは、重たい話とか、なんなら人が死んじゃう話とか多かったんですけど、今結構心が病んでる人がとても多いと思うんです。世の中に。自分の周りにも結構いますし。それプラス、今年の5月にちょっと入院したんですね。人生で初めてだったんですけど、初めてそこで自分の中で自分が死ぬんじゃないかっていうのと向き合って、そんな時に重たい話なんかしたくないし、観たくないなってちょっと思う所があったんです。そこから本の書き方というか、考え方が大きく変わりましたね。あとやっぱり重たい話とか人が死ぬ話の方が書きやすいんですよね。周りの人達の感情の起伏が分かりやすいんですよ。でもお笑いとかって、一番書くのが難しいです。勿論お笑いが好きなんで、だから難しい方を目指しているっていうのはありますね。
二 はい。
あ 芸人さんでも、どっちかっていうと東京03とかシソンヌとか、コントなんだけどお芝居でもあるような芸人が、自分の中では好きでもあるし、目標でもありますね。
二 もしメンバーを募集するとしたら、どんな人に来てもらいたいですか?
あ 経験者とかそういうのは関係なく、ホームページにも書いてあるんですけど、心身共に健康である人で最低限の礼儀を守れる人であれば、年齢も特に決めてないので、やりたいという人がいれば入ってもらいたいです。

二 次回公演はどんな感じの公演になりそうですか?
あ そうですね。お互いの年齢もほぼ実年齢で、俺が先輩役で内藤が後輩役の会社の同僚みたいな、その二人の夜の残業の一風景みたいな感じです。で、内容的にも大きな盛り上がりが有るというよりは、皆さんがどこかで経験した事がある日常を切り取ってお見せするというのが、メインですかね。
二 今回は長編作品ですか?
あ 前回が三本のオムニバスだったので、今回は70分で途中一本コント的なものを入れるというか、回想シーンとして一つコントをやって、また本編のストーリーに戻るという感じです。
二 時間は大体……
あ 二人で90分まで行くと見る方もなかなか厳しいと思うので、大体60分〜70分くらいで考えてます。


二 上越の演劇をまだ見てない、新潟市などの他の地域の人にアピールするとしたら?
あ 新潟市に比べると、規模や劇団の数で言うと上越市は圧倒的に少ないんですけど、でもだからといって質の悪いものは絶対見せたくないので。作品の良さや質は負けないぞという気持ちでやってます。
二 内藤さんは、どう思います?
内 正直言うと新潟市などの他の地域の演劇をあまり見てないのですが、少なくとも自分達の上越市の団体は、絶対にお客さんに楽しんでもらえる様に作ってます。負けないぞというよりかは、ちゃんと出来たものを皆さんに見てもらいたいという気持ちで作っていると思うので、そこは伝わって欲しいと思います。
二 分かりました!今日は有難うございました。
あ・内 有難うございました!

練習後の疲れてる時間に長々とインタビューしたのにも関わらず、快く答えてくれたお二人には本当に感謝です。
あらかわさんの芝居はガテンボーイズ時代から続けて観て来ましたが、笑いの中にも優しさのある内容で、最近は台本のエンタメ的仕掛けも向上してると感じてます。公演を観る度にどこかしら良くなってる所があって、毎回観るのが楽しみな劇団です。
春の新作公演には、皆さん是非注目して下さい!
また公演を予定している会場の『町家交流館 高田小町』は、映画館の高田世界館から道を挟んで目の前です。演劇鑑賞と映画鑑賞のハシゴも出来るので、離れている地域の人も、それを目当てに長旅もいいと思います。
他の上越の劇団も頑張ってますので、上越の演劇の盛り上がりに是非注目を!
Information
上越演劇集団ゴーストハート 出演情報
2024年3月17日(日)
10:00/14:00
会場:上越文化会館 中ホール(上越市新光町1-9-10)
「朗読劇:駆け込み訴え」 わたなべかすみプロジェクト
「簡略ヴェニスの商人」 STAGE D
「招かれざる客人」 上越演劇集団ゴーストハート
前売り:1,000円
当日 :1,200円
学生 :500円
◎SNS割:各SNSで公演情報をリポストやシェアなどで宣伝協力すると100円引き!
予約・お問い合わせ(保坂)
電話:070-1004-0885 / Mail:stage.dddd@gmail.com

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(記事公開:2024年2月7日)
インタビュアー【二瓶光】
劇団御の字・concepton代表。県内演劇を上から下まで観に行きたい人。
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